アンモニア電解合成

アンモニア電解合成(アンモニアでんかいごうせい)とは、電気エネルギー、電気化学的手法を用いてアンモニアを合成する方法である。

旧来のアンモニア合成方法であるハーバー・ボッシュ法の場合、高温高圧が必要で、大規模なプラントでなければコストを抑えるのが難しい。そうした現状を乗り越え、より小規模でより低コストのアンモニア合成を目指している。2022年時点では実用化を目指した研究が行われている[1]

種類

窒素水素を電解セルに通してアンモニアを合成する方法と、水を電気分解するのと同時に窒素と反応させてアンモニアを合成する方法の2つが研究されている[2]

全反応
1 2 N 2 + 3 2 H 2 O NH 3 + 3 4 0 2 {\displaystyle {\ce {1/2 N2 + 3/2 H2O -> NH3 + 3/4 0_2}}}

電解セルを用いる方法

電解セルの材料となる固体電解質には、プロトン(H+、すなわち水素イオン)伝導体と酸化物イオン伝導体の2種類がある[3]。プロトン伝導体を用いる場合、水素をプロトンにし窒素とプロトンと直接反応させることで、アンモニアを合成する[4]

2024年出光興産東京大学大阪大学大学院工学研究科、産業技術総合研究所の合同チームがモリブデン触媒及び条件の最適化により、常温常圧でのアンモニアの連続電解合成の効率を従来の約20倍に向上させることに成功したと発表した[5]

溶融塩を用いる方法

この方法では、陰極で窒素を窒化物イオンにし、これを溶融塩に溶かして水蒸気または水素ガスと反応させることで、アンモニアを合成する[2][3]。この時、陽極酸素が副生する[3]。このようなアンモニアの合成方法を、「常圧アンモニア電解合成法」と言う[2]

脚注

  1. ^ 伊藤靖彦「溶融塩を用いた常圧アンモニア電解合成 (特集 アンモニア合成の新展開)」『エネルギー・資源』第42巻第5号、エネルギー・資源学会、2021年、328-332頁、CRID 1520853835164412288、ISSN 02850494。 
  2. ^ a b c 靖彦, 伊藤「アンモニアエコノミーと常圧アンモニア電解合成」『水素エネルギーシステム』第36巻第4号、2011年、27-33頁、doi:10.50988/hess.36.4_27。 
  3. ^ a b c “アンモニアの電解合成” (PDF). Industrial Catalyst News. 2022年7月4日閲覧。
  4. ^ “世界初!常圧220℃でのアンモニア電解合成”. 北海道大学工学部 応用理工学系 応用化学コース (2022年3月27日). 2022年7月5日閲覧。
  5. ^ “常温・常圧で進行するアンモニアの連続電解合成で世界最高性能を達成”. 出光興産 (2024年7月4日). 2024年7月24日閲覧。