カグラバチ

カグラバチ
ジャンル 少年漫画
剣劇[独自研究?]
アクション[1]
ファンタジー[2]
漫画
作者 外薗健
出版社 集英社
掲載誌 週刊少年ジャンプ
レーベル ジャンプ コミックス
発表号 2023年42号 -
発表期間 2023年9月19日[1] -
巻数 既刊3巻(2024年7月4日現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

カグラバチ』は、外薗健による日本漫画。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて、2023年42号から連載中[1]。第14話の扉ページにある漢字での表記は「神楽鉢」[3]

沿革

2023年9月11日発売の『週刊少年ジャンプ』41号より、3号連続で新連載をスタートさせる「JUMP NEXTWAVE 新連載3連弾」を開始[4]。これは漫画家全員が手塚賞出身者で、今回が連載デビュー作となる企画であった[4]。本作はその2作目として[5]、同年42号より連載を開始[1]。連載開始時にはPVを公開[1]。2024年2月3日より、単行本第1巻の発売を記念してボイスコミックを公開[6]。第1巻には堀越耕平[7]、2巻にはVaundy、3巻には岸本斉史が、それぞれ帯にコメントを寄せている。

2024年7月時点でデジタル版を含む累計発行部数は35万部を突破している[8]

あらすじ

六平 チヒロは3年前のある日、憧れの存在であった刀匠の父を3人の妖術師に殺される。毘灼によって奪われた父の妖刀を取り戻すために妖術師となり、父の古くからの知人である柴らと行動する。

始まり(1話 - 2話)

18年前、日本では斉廷戦争と呼ばれる大きな戦争があり、"敵"と妖術師が戦い、妖術師たちが勝利した。その斉廷戦争では、六平国重という鍛冶の作った、強大な力を持つ「妖刀」という武器が活躍した。戦後、日本は一部の地域ではヤクザが跋扈する治安の悪い社会になっていたが、国重は妖術による結界で守られた隠れ家に、斉廷戦争で用いられた六振りの妖刀を隠した。また国重は戦争の終結する前後に千鉱という息子をもうけており、隠れ家で暮らしつつ、千鉱に刀について教え、刀を作っていた。

3年前、千鉱が15歳のときに、隠れ家の結界が破られ、「毘灼」という名で知られる妖術師集団の手の者が侵入して国重を殺害し妖刀を奪った。このとき隠れ家にいた千鉱は戦闘に巻きこまれたものの、息子の存在を妖術師が知らなかったのか、殺されずにすんだ。千鉱は突然父を失ったことで、妖刀をめぐる人々の思わく、父の刀への思いを実感し、奪われた妖刀を追って戦うことを決意する。

その後千鉱は3年間で戦闘技術を磨きあげ、国重の旧友の妖術師の柴とともに妖刀の情報を探りつつ、反政府的な妖術師とつながる各地のヤクザを殺してまわっていた。

vs. 双城編(3話 - 18話)

あるとき、爻龍組から毘灼の情報を得ようとしたが失敗し、東京に一度戻った際、情報屋のヒナオから、妖刀の目撃者らしき人物がいたと連絡があり、二人はその人物に会いに行く。しかしヒナオの店ハルハルでその目撃者として二人が見たのは「シャル」と名のる孤児であった。シャルは自分は悪党に追われているので護衛の妖術師をつけてほしいと言うもののその悪党とは何かという部分はしゃべらず、妖刀の目撃者かどうかは疑わしかったが、孤児を放置するわけにはいかず、とりあえず食事を取らせようということになり、千鉱が蕎麦屋に連れていった。千鉱とシャルが蕎麦屋で蕎麦を食べはじめたとき、ちょうど同じ店にいた別の客が突如店の主人を殺し、店を爆破し、シャルを拉致しようとした。その客はシャルを探していた妖術師であり、千鉱はその妖術師の言動から、シャルは何らかの謀略の渦中にあると確信し妖術師と戦う。その間柴がワープ妖術でシャルを助け出した。

千鉱は妖術師を比較的無傷のまま制圧し、柴に引き渡してシャルとともにハルハルにもどった。一方柴は捕らえた妖術師に拷問を行い、情報を得た。それによれば、自分は「双城厳一」という大物のヤクザに雇われている妖術師であり、双城厳一は妖刀を持っているという。千鉱と柴はシャルを保護しつつ双城厳一に迫ることを当面の方針に決めた。

妖術師には監視のためのヤクザがついており、その一人が謎の黒服の男と妖術師の戦闘を見てそれを双城に報告した。その情報から双城はその黒服の男が使っているのは自分の知っている六妖刀以外の妖刀であると考え、黒服の男を探す妖術師を送ることにした。そして重要な情報を伝える功績を挙げたヤクザについては、何となく気に入らないので両目をつぶし、壁に吊るしてしばらくそのままにした。

双城は東京の妖術師たちに「妖刀を持つ男とその男の連れている子どもを生け捕りにしてくれば何でもいくらでも払う」と情報を流した。千鉱とシャルはそれを見た妖術師たちを敵に回すことになり、外で車に乗っていたのでさしあたり逃亡するが、二人の妖術師のペアに捕まってしまう。千鉱は一度はシャルの身柄を奪われるが、相手の虚をついて妖術師二人を斬り殺し、シャルを取り返した。このときの戦闘で、シャルは身体な驚異的な再生能力があり、双城はそれを利用して何かをしていたことが千鉱に露見した。シャルは自分の体質を知られるのは危険だと判断して千鉱にそれを隠していたが、二度の戦闘をへて千鉱を信頼し、このことを告げた。

戦闘で車が破壊されたため、当座隠れる場所を求めて千鉱はシャルを抱えてどこかに向かおうとする。そこに別の三人組の妖術師が現れて、千鉱に攻撃をしかけた。シャルを抱えて三人を相手にする連戦では分が悪すぎたが、柴の知人で治安維持機関「神奈備」の薊が千鉱を助け、妖術師の一人はそれ以上戦わず逃げ帰った。

千鉱、シャル、薊は柴とヒナオのいるハルハルにもどってきた。薊は千鉱と柴に対して、七振り目の妖刀の存在が公然のものとなったことで(国重-柴-薊ほかの秘密のつながり以外の)神奈備の人間が表立って千鉱に接触してくるであろうこと、また裏社会の要人の集まる年に一度の競売「楽座市」に、双城が六妖刀の一つを出品すること、の二つを教えた。千鉱は双城と毘灼がつながっていることはもはや明らかだと考えた。薊は先んじて君はこの件には手を出すなと制止するも千鉱の決意は固いと見るや全力で準備しろと言い残した。

蕎麦屋で偶然千鉱を襲撃した妖術師円は、拷問のあと解放されるが、柴の言葉で妖術師をやめ、カタギにもどることを決めた。しかしその翌日に双城に惨殺された。そのあと双城は千鉱を襲撃した妖術師の一人の弟も殺し、生血のついた抜き身の刀を手に持った状態で街中を歩いて喫茶ハルハルに訪れ、そしてそこにいた黒服の男に攻撃をくりだした。双城は妖刀の持ち主といきなり直接戦うためにやって来たのであった。

千鉱はハルハルにいたシャルとヒナオからうまく離れて双城を誘導し、屋外で戦うことにした。双城は千鉱に対して妖刀への思い入れを語り、知らない妖刀の存在と、妖刀の存在意義について問うた。千鉱がそれに答えないのを見て、双城は妖刀は殺戮のためにあると言い、電撃を放つ技「鳴」を街中の通行人たちにくりだす。千鉱はそれを防ぐために自分が攻撃を受け、かなりのダメージを負ってしまい、迫る双城に対して「錦」を使って拮抗を保とうとする。しかしそこに一台の車があり、窓からシャルの足が見えた。千鉱はシャルが捕まったと思い、双城から一旦離れて車内のヤクザを斬り殺したが、その車は足だけを見せる陽動で、シャルは別の車に捕まっており、ヒナオも別のところで負傷していた。戦闘は柴、薊ほか神奈備の援軍がまにあい、双城が分が悪いと見て退却したことで中断となった。双城はシャルを確保したことで一応は満足した。

千鉱は薊らに救助され、病院で治療を受けた。戦闘から5日後、千鉱が病院のベッドでちょうど目を覚ましたときに柴、薊から双城と神奈備の動きについて説明を受けた。それによれば「ヒナオは負傷していたが救助がまにあった。シャルは双城の研究に必要であるため生かされてはいると思われる」「双城は、玄力を高密度で保持できるが手にした人間に玄力を流しこんでくる、「雫天石」という危険な物質を持っている。そこで強力な再生能力を持つシャルの細胞を加えて雫天石を人間が安定して持てるようにする研究を行っている」「神奈備は双城の動きが急になってきたことにかんがみて、今連れてきたこの神奈備のメンバーで双城を倒しにいく」という。しかし千鉱がシャルを助け出しにいきたいと申し出たため、神奈備の部隊が双城に対して陽動となり、千鉱と柴がシャルの救助のために双城の拠点に潜入するという作戦でまとまった。

千鉱が負傷から回復していないことなど不安要素があるものの、千葉にある双城の拠点の潜入と双城との交戦が決行された。神奈備の部隊は銭湯から出てきた双城と空中に浮かべた岩の上で戦い、「鳴」を基軸とする双城の戦術にいどむ。千鉱の方は当初は順調に進んだものの、見張りの妖術師に見つかり、戦闘になってしまう。一旦逃走した千鉱は拠点の建物の中で「涅」を同時に連射する「涅・千」と「錦」を駆使して玄力を大量に消費し、見張りの妖術師を殺し続け、シャルのところにたどりついた。外に出た千鉱はシャルの特殊能力である他者の細胞の回復を受け、別行動をしていた柴と合流した。その直後、柴と千鉱は双城が帰ってきた気配を感じ取った。神奈備の部隊は双城の機転で敗れ、戦死したらしかったが、千鉱は柴とシャルを避難させ、そして負傷している双城とまみえることになる。双城は一度千鉱を一室に招き、串団子をふるまい、妖刀とは何かを語った。千鉱は双城のいう「妖刀とは殺戮のための力の権化」という思想を認め、自分の考える妖刀のありかたとはちがうが、双城の言う妖刀も、父の遺したものの真の姿であることを受け入れた。そして二人は決着をつける戦いに臨み、右腕の欠損という代償を払い千鉱が勝利した。双城は最後の力をふりしぼって研究室までいき、そこに残されていた雫天石をつかみ、玄力を体内に入れ、玄力は暴走し爆発を引き起こした。この戦いで刳雲は破断したものの千鉱が回収することができた。シャルの能力で今後右腕は再生できるかもしれないが、それまでは隻腕で戦うことになった。

その10日後、楽座市の日が近づく中、神奈備の本部で会議が行われ、対双城戦の結果が報告された。戦闘に参加した神奈備のうち4人が死亡、2人は生存したが身体の欠損が著しい状況であった。また生存者の片方が六平の息子の存在、七つ目の妖刀の存在、双城を殺したのはその六平の息子であることを証言し、千鉱をかばっていた薊を中途半端に裏切る行動に出た。神奈備本部は六平と妖刀をめぐって意見が二分されており、上層部の一人である薊は、事が露見しすぎた今会議の場で迂闊なことは言い出せなかった。神奈備本部は目下刳雲は六平の息子が持っていると推定し、素性の不明な一私人が二振りの妖刀を持つという脅威を排除するため、神奈備のエリート戦闘員である緋雪を送ることにした。

楽座市 前編 (19話 - 27話)

裏社会には古くから力を持つ「漣(さざなみ)」という旧家があった。漣家は、異空間を生み出しその内外に物体を移動させる妖術を発現した初代当主が裏社会に関わったことに始まり、漣家初代当主はこの妖術を用いて裏社会での物のやりとりを仲介することで権力を得た。その後初代当主は特殊な儀式を編み出し、この妖術を代々継承させることで、裏社会での仲介役という権力の源を世襲することにした。いつからか漣家は、年に一度日本全国から来る裏社会の希少な商品の競り「楽座市」を行うようになり、またこの伝家の妖術は、いつからか「蔵」と呼ばれるようになった。

現在の漣家の当主は京羅といい、先代の当主から継いだ「蔵」を用いて楽座市を開き、また「蔵」の継承者にふさわしい子を得るため嫡子のほか傍系の親族を抱える大家族の長もつとめていた。京羅の嫡男の一人は伯理という名で、伯理は幼いころは期待されたが、妖術の使い方が不得手で戦闘力が低かったため、家の中で落ちこぼれのあつかいを受けるようになり、異常者である兄の宗也に殴る蹴るの虐待を受けていた。京羅は伯理を半ば見限っており、宗也の虐待も見てみぬふりをする倫理的には失格の父親であったものの、一応は伯理に漣家の子として末席の立場を与え、教育を行っていた。

六平国重が殺され妖刀が奪われる事件から3年後の年の8月、伯理は今年の楽座市に出す商品の管理を一部任され、蔵に入る前の商品を確認し、食事を与える仕事を数日命じられた。その商品の中に、体から常に冷気が出てしまう妖術を持った若い女があった。伯理はその女が絶食をしているのを見咎めたが、「話し相手になってくれるなら絶食はやめる」と言うので、しかたなくそれにつきあうことにした。その女は伯理が家族に殴られていることを聞き、腫れた部分に軽く触れて冷やすなどし、商品とその監視者以外の私的な関係がある程度生まれた。その女を含んだ商品のグループが蔵に入る当日、伯理はその女を檻から出し、幇助の責任を問われることになるが浅い覚悟で逃亡を許した。しかし檻から出たその女は、「私は最初愛した男に売られ、そのあと楽座市の商品として男に買われ、売られることを何度かくりかえした。檻を出たら自殺するつもりであなたに今までのような態度を取っていた。あなたは自分を虐待する家族という檻の中にいるけども、その檻のある世界それ自体が檻」と言い、近くにあったナイフで自刎して死んだ。伯理はその商品の死にショックを受け、年齢のわりには遅いながらも、漣家と楽座市の邪悪さをはっきりと自覚した。京羅はこの事件に対して「商品を損なった伯理の責任はあるが、いわゆる性奴隷の自殺はありうることではあるし、それを予見して暴力的手段で止めようとすればかえって商品を伯理が殺す可能性もあったし、また伯理の今までのこともある」ともろもろを勘案し、温情的な処分という名目で伯理を家から追放することにした。ただし宗也はそれを認めず、戦闘訓練の合間などに外で個人的に伯理を探しはじめた。

追放されて少したったある日、伯理は街の喫茶店にいたが、その喫茶店は外で突然起きた戦闘に巻きこまれた。伯理が窓の外を見ると、一般人をかばって攻撃を受け、瀕死の状態で何者かと戦う黒服の男がおり、伯理はその姿に感激して気力をとりもどした。それが二ヶ月半ほどが過ぎた11月1日、伯理は10歳ぐらいの女がヤクザに拉致されそうになっているところに出くわし、気が大きくなっていたこともあって割って入った。ヤクザは少女に逃げられ、ボスに示しがつかないのでかわり伯理を捕まえて、ボスの宿泊するホテルの上階の畳の間に連れていった。ホテルの一室で伯理はヤクザにいたぶられるが、腐っても妖術師の名家である漣の人間であったため、殴られる部位を無意識に玄力で強化して実態以上に痛めつけられている振りをしていた。そこに偶然賊が入り、ヤクザを次々と殺し、場が騒然となる。その賊は以前目撃した黒服の男であり、結果的に自分を助けたことになった黒服の男に同行して伯理は脱出を図った。途中、黒服の男は伯理に「漣家と楽座市の情報を探っている」と教えた。伯理は以前感激した黒服の力になれる期待から「自分は漣家の者だ。多少は知っている」と答えた。黒服の男は突如大きすぎる拾い物をし、無表情で驚愕する。二人はとりあえず黒服の潜伏先にいくことにし、楽座市を破壊するという目的と、妖刀「真打」の出品とについてごく断片的に話しつつ、エレベーターで地上階に降りた。

エレベーターのドアが開き、地上階のロビーの光景が目に入ってきたとき、ちょうどロビーでは何者かが立っていた。何者かは妖術で変化させた異形の腕を見せつつ、黒服の男に向かって言う。「お前が六平千鉱だな。その妖刀を渡せば何もしないが、渡さないなら攻撃する」 その何者かは、神奈備から送りこまれた戦闘員の香刈緋雪であり、結界術使いである相棒の美原多福とともに、千鉱を追っていたのであった。千鉱は「お前たちとは戦う理由がない」と答えたところ、緋雪は前言を忘れて攻撃を繰り出し、ついで「別の妖刀(刳雲)はどうした?」とたずねる。千鉱は「刳雲は俺が持っているが、折れている」と正直に答え、再度見逃してくれと要求するが、緋雪は個人が妖刀を持つことは危険すぎると言い、攻撃を止めなかった。緋雪の攻撃を抑制的にかわすばかりの千鉱を見た伯理は衝動的に飛び出して割って入り、顔面に緋雪の攻撃を受けて千鉱を助けた。倒れた伯理は千鉱に「8月の街での戦闘の場に自分もおり自分は命を助けられた一人だ。妖刀を使って戦い人々を救ったお前は妖刀を持つにふさわしい。逃げ回ってないでそいつを倒せ。真打を奪取するんだろう?」と訴える。千鉱はそれを聞き一応は戦うことを決意した。千鉱は高速で接近し淵天で斬りかかると見せた脇差しで白刃取りをさせ、淵天の峰打ちを緋雪の額に当てた。緋雪は超人的な動体視力で自分に迫る淵天が峰打ちであると見ぬき、あえて額をさしだしたのであった。緋雪は二重三重の意図、利害によって一つの行動が多くの意味を持つことに耐えられない、潔癖と短気が半々の性格をしているので、淵天を渡さず戦うと言いつつ、殺すまではいかないように手加減を若干まぎれこませる千鉱に「殺す気で戦え!」と叱咤する。一方、戦いを見守る多福はどちらかというと千鉱に同情的であり、仕事のため結界の維持だけ行っていた。緋雪は大技の「脊柱」を発動しようとするが、伯理が気絶して(勝負の結果が決まるまでという条件であった)結界が消滅し、千鉱が伯理を連れて逃亡に成功して千鉱の勝利となった。緋雪と多福は千鉱が現れるであろう楽座市の場での再戦を期した。

この伯理と千鉱の出会いよりいくらか前、柴と千鉱は楽座市の思わくを話しあった。柴は言う。「妖刀には命滅契約という安全装置があり、妖刀を使うには前の使用者を殺すか、契約を解除する別の何らかの方法を取るかしなければならない。そして妖刀の前の使用者は、何者かに殺された刳雲の使用者以外は、神奈備が監禁している。また真打を入れてある箱は、手練れの妖術師でも10年は封印を解除する手順を見つけ出せないはず。そこで、毘灼か何かの勢力は、妖刀を確保したがっている神奈備に真打を落札させ、それによって上層部の政争、混乱を誘い、それに乗じて前の使用者を殺せるような事態すなわち封印に影響のある事態を作り出す。そういうたぐいのことを狙っているのではないか。そして実際に神奈備が真打を落札するという情報が(神奈備内部のパイプで)来ている。このままだと真打を確保できなくなる。その前に真打を盗み出すほうがよいだろう」

千鉱とともに潜伏先に来た伯理は千鉱のいきさつを聞き、しばらく柴らのところに身を寄せることにした。柴、千鉱、伯理はたがいの持っている情報から話をまとめ、「楽座市の前に裏から真打を盗み出すほうが事が大きくならずにすむ。その真打は蔵という異空間にあると思われるが、蔵の場所は京羅しか知らない以上、京羅に接触するしかない。京羅は一族から選抜した「涛」という4人の護衛をつけていて、そちらも要警戒だが、伯理は戦闘力がなく、狙われる可能性もあるので柴と千鉱の二人で京羅のいる屋敷に侵入する。何かあったときはヒナオの連絡で柴がワープ妖術でもどる」という流れになった。

緋雪と多福は神奈備の東京本部に趣き、千鉱を取り逃がしたこと、楽座市で自分たちの配属されるところをたずねる。神奈備上層部の一人は「神奈備は楽座市で戦闘をせず、大金で真打を落札する意向である。お前たちは引き続き六平の息子を追う方に回れ」と答えた。緋雪は怫然として「正面から戦って真打を確保すればいいだろう。人身売買を堂々と行っている楽座市に加担するのか?」と抗言した。しかしそれは容れられず、緋雪は憤慨するも、競売の外で遊撃的に動き、千鉱を捕獲するために戦闘も許されるあいまいな立場になった。

楽座市の近づく中、京羅は車で屋敷に帰ってきた。屋敷の自室には二人の賊が入りこんでおり、帰ってきた京羅に「妖刀真打のありかを教えろ」と要求した。京羅は賊の持つ刀を見て「その刀は妖刀。君が六平国重の息子の千鉱かな?」と語る。京羅はどこからか第七の妖刀の存在を知らされていた。続いて京羅は妖術で真打、そして蔵の映像を作り、「蔵」のしくみを明かした。「蔵は私の妖術で維持されている空間であり、私が死ねば中の商品ごと蔵も消滅するだろう。今は私と真打の帰趨は一体であり、真打を手に入れるために私を脅しても無駄だ。そして真打は渡せないぞ」蔵の商品を人質にした返答に賊は言葉を濁した。京羅は賊にすんなり帰らせる気はなく、涛を呼び、戦わせた。賊の片方は退却しようと言うがもう片方は交戦を選び、片方はワープ妖術で姿を消した。

柴と千鉱が京羅の屋敷に侵入している間、伯理がヒナオに買い物を頼まれて外に出ようとしたところ、伯理を探していた宗也に偶然出会った。宗也は喜び、「家に帰ってこい」と説得しようとするが、あとから来たヒナオを見て伯理がこの女にだまされていると思い、目を覚まさせるため伯理の顔面を殴った。ヒナオは緊急時の連絡で柴を呼び、宗也と柴の戦闘に至る。柴が千鉱をおいて京羅の屋敷から退却したのは単なる退却ではなく、ヒナオの連絡によるものであった。柴は宗也の戦闘力を見て、宗也を連れてでも京羅の屋敷にもどって再合流するほうがよいと判断し、戦闘中の庭に出現した。当惑する宗也が「伯理を見つけたのに!」と叫ぶのを聞いた京羅は、賊が伯理から情報を得たと考えると事態のつじつまが合うと考え、「蔵」を使って伯理を屋敷の庭にワープさせた。漣家の子は当主による「蔵」で随時呼び出せるようになっており、伯理は最悪の状況に備えてその「蔵」の対象に残されていたのであった。京羅は家に害をなす不肖の息子伯理に失望し、最後にだけは役立ってもらうかという利己心と、息子の命を取らずにおいてやろうという汚い愛情から、彼を人質にして賊に妖刀と伯理の交換を提示した。賊の片方は(1)妖刀を引き渡す (2)伯理を解放し、戦闘を終了する (3) 自分たちの安全な場所までの逃亡を見逃すという条件でこの交換を呑み、もう片方もこれを承諾した。戦闘後、京羅は思いがけず入手した妖刀を蔵の中で眺めつつ、楽座市の期待を大きくした。そして楽座市で「真打」のほかにもう一振り妖刀を出品するという情報を流した。

京羅の屋敷での戦闘で淵天を失った千鉱たちは柴のワープでもどり、後日千鉱の金魚で蔵を探り、いくらか蔵の情報を得て、伯理の証言とつきあわせつつ推測を進めた ――「蔵」は漣家の持つ地下墓地「凪浄苑(なぎのじょうえん)」で儀式を行うことによって継承しているらしく、その墓地のある地下には独特の文様の扉が置かれた場所がある。蔵の空間は現実にはありえない構造をしており、多数の商品と武器のほかに謎の孤立した扉が一つあるが、その扉から人が出入りしているような気配はない。これは当主とは別に現実の空間と蔵をつなぐものなのではないか、ならばそこに入れば手がかりが見つかるかもしれない ――千鉱たちは真打と淵天の奪取のため、地下にある楽座市会場からさらに地下にある空間に潜入する計画を立てた。楽座市の当日11月8日、シャルの力で右腕も治した千鉱が地上の正面入口から入り、柴と伯理が上階から侵入した。千鉱は多少はまだ使える刳雲を節約しつつ戦力として、敵の動き、思わくも不明な綱渡りの状況に挑む。

楽座市 後編 (27話 - 44話)

会場の少し中に入ったところで、千鉱は楽座市会場の地上部に突入してきた緋雪、多福を目にした。千鉱が正面入口から入ったのは、刳雲しか妖刀がない中で緋雪と交戦するとその後の戦闘にさしつかえるので先に交渉をしておくという事情もあった。会場を警備するその場のヤクザと妖術師を多少倒した緋雪は結界内で「淵天が競売にかけられるなら、真打といっしょに神奈備が落札し、神奈備が確保することができる。命滅契約の維持のため、当座は貴様の身の安全を守るのはやぶさかではない。だが淵天を奪取しようとするならそれは妨害する。競売のあとは妖刀の所有者として監禁されるか、それに抵抗して殺されるか、選べ」と千鉱に言う。千鉱は相手の良心につけこむ狡猾さを持ち合わせているので「淵天を奪取するのは、商品の人たちを救出し、楽座市というこの仕組み自体を破壊するためだ。商品の人たちがどうなってもいいのか? お前と戦う気は毛頭ないが、捕まる気もない。ここは見逃してくれ」と説得する。緋雪はそれを聞き、淵天の奪取には協力し間接的に楽座市を破壊することを助け、神奈備が競売で淵天を入手するルートは捨てて楽座市のあとで自分が千鉱を殺して手に入れるという、命令違反、かつ妥協とも貪欲もいえる宣言をした。千鉱を先にいかせたあと、緋雪と多福はその場のヤクザと妖術師をすべて倒した。多福は緋雪に「本当にあいつを殺せるのか?」とたずね、緋雪は「危険な力を持つ妖刀を確保する、その大義の前ではやむをえない。商品の人たちを救出するという、命令外の余計なことをやろうするのだから、その分だけ本来すべきこともやらないとな」と答えた。

柴は侵入したあと、ワープ妖術で千鉱より先に地下へ向かうが、そこには「涛」の四人が待っていた。その一人宗也は囮として伯理を見せて地上へ走らせて囮とし、残り3人と柴が戦う計画であった。伯理はうまく囮になり、地上への通路のところで千鉱を見つけたが、ヤクザの中に毘灼の統領を自称する妖術師がまぎれこんでおり、その妖術師の使う木の壁の妖術で通路は遮断された。伯理は宗也に追いつかれてしまい、柴のところにもどることもできなくなった。千鉱は妖術師に襲いかかるが相手が何枚か上手であり、抑えこまれる。そのころ上では真打の映像が壇上に現れ、真打の競売が始まった。妖術師は千鉱に「ここでお前を殺すのはたやすいが、事態をかきまわす存在として利用できる面もあるから、一旦は殺さずにおいてやろう。真打は私が使うために楽座市に出し、漣家にも協力している」と告げた。そして千鉱の父のことを話そうとしたとき、千鉱は刳雲の「鳴」を放って拘束を破り、再度妖術師に襲いかかる。それにより妖術師に多少攻撃が通ったものの、こちらを見極めるかのような、不審な手加減するような態度を取っているので、木の壁を突破して逃げる方針にきりかえた。

同じとき、宗也が逃げ場のない伯理をゆっくり痛めつけて兄弟愛を語っていた。伯理は千鉱が壁の反対側で「鳴」を使ったことを察知し、今までできなかった渾身の低エネルギーの「威葬」を打ちこんで宗也を木の壁に追いやる。そのタイミングで千鉱は「鳴」を発動して木の壁を破壊し、同時に宗也の背後に一太刀浴びせた。「鳴」の目くらましにかかった妖術師は、もともと強いて達成すべき目的があって地下に来たのではなかったので千鉱と伯理を追わず見逃した。

その直後、直接は利害のぶつかっていない緋雪が現れたため、戦闘を避け妖術でその場から去った。緋雪は毘灼のいなくなった場で、「涛」ではないが漣家の精鋭である妖術師たちと戦う。柴はそのころ「涛」の四人を一人で倒していたが、その一人で伯理の弟である天理の前に、双城の実験品である雫天石が送られてきた。その雫天石は、双城とつながりのある毘灼が京羅に与えたものであり、今楽座市の壇上に立っている父京羅から息子天理への、「これで戦って死ね」というメッセージであった。天理は喜々としてその雫天石をつかみ、命とひきかえに柴を食い止める。

千鉱と伯理の方では、不意打ちを受けたことで弟を殺すことにした宗也に対して、伯理が時間稼ぎをする。伯理は威葬をくりだす。千鉱は柴のもとに急ぎ、蔵からワープしてきた刀を飛ばす攻撃の瞬間に遭遇し、柴をかばって「結」で防いだ。雫天石の力は強大であり、千鉱はこのまま攻撃をかわしつづけようとしても命中してしまうと考え、やむなく「鳴」を使い天理の背後から頚をとらえた。しかしその瞬間に玄力の暴走が始まって体が破裂し、刃を外してしまう。天理は「父さん、ごめんなさ、」と言いかけて死に、千鉱がとどめをさしたのと同じともちがうとも言える結末となった。ここまでの戦闘で刳雲は寿命がほぼ尽きた状態になった。

伯理は宗也の「威葬」を受けて倒れた。宗也は二発目を当てて伯理が気絶したらしいのを見て立ち去ろうとするが、伯理は「蔵」の能力を自覚し、使用できるようになった。それに気づいた宗也は激高し「漣家の一子相伝の妖術を独自に使用できるはずがない」と叫び攻撃するも、「蔵」と同様に覚醒した「威葬」の直撃で倒れた。伯理はその後ちょうど天理を倒した千鉱と合流した。二人は家族を手にかけてでも楽座市をとめる決意を新たにした。

柴、千鉱、伯理の三人は、伯理の能力について話しつつ先へ進み、目的の扉に向かった。扉のある部屋を開けると、中の扉は破壊されており、直接ここから蔵に入れなくなっていた。京羅は扉をあえて千鉱たちに襲撃させる囮として使い、息子も含まれる「涛」もだまして大きな弱点であるかのように見せかけていたのであった。三人は楽座市の会場に移り、映像の京羅の前で伯理が能力を発動して京羅本人のいる蔵の中に千鉱を送りこんだ。京羅が蔵の床を変形させて千鉱に攻撃をしかけるも、千鉱は刳雲の砕ける最後の「鳴」を放ち、周囲を破壊しつつ目くらましにして、蔵にあった淵天を手にした。

千鉱は、特定の人の玄力を持ったものをワープさせることもできる伯理の能力と、玄力の塊である自分の金魚を組み合わせ、金魚を蔵の商品に当てて現実世界にワープさせつつ京羅の攻撃をかわす。京羅は最初は気を取られたものの商品の檻を壁で遮り、残りの商品を守って千鉱を追いつめる。伯理と京羅は異空間の操作に強烈な負担をともなっており、長時間の戦闘は厳しくなっていたが、千鉱が爆発を煙幕として背後にワープし斬りかかってくるかのような映像を京羅に見せつつ千鉱が上から飛びかかるという、二重のフェイントによる一撃が成功した。深手を負った京羅はもう持たないと判断し、蔵の床の中に隠した真打を使うことにした。真打は本来は命滅契約とは別に、神奈備が特殊な封印を施した箱に収められている。しかしその封印はすでに毘灼に破られており、斉廷戦争で戦った一部の人間以外は見たことのない真打の異能がふたたび用いられることになった。瀕死の京羅では抜刀はできなかったが鞘のままで異様な禍々しい力を放ち、その力にあやつられるように京羅は千鉱をしとめようとする。その力は京羅の意識を侵食し、体力を吸いとることで生じるものであった。

京羅は知らないはずの技「蜘蛛」「蜻」をくりだす。同じく真打の技の詳細を知らない千鉱は回避できずかかってしまうが、伯理によって蔵にワープしてきた緋雪に間一髪で助けられた。異空間に来た緋雪は、京羅を倒すために一時的に千鉱に協力することを申し出る。二人は京羅にとびかかるも、やはり身体能力の上昇と「蜘蛛」「蜈」によって容易には近づけなかった。その間、真打は京羅の体力を吸いつづけ弱らせていった。しばらくして京羅はワープを発動し、緋雪と千鉱も巻きこんで競売の会場に出現する。京羅は真打の侵食で意識と体力が限界に来ており、会場のヤクザたちにも技をかけはじめ、さらに蔵も崩壊しはじめる。その光景を見て「蔵の残りの商品の人たちをどうするか」という問題が緋雪らの脳裏によぎった。伯理は蔵にいる人に玄力をこめることでワープさせることができると言うが、蔵に入っている間に京羅が死亡し消滅に巻きこまれる可能性、自分の体が持たず途中でワープができなくなる可能性がある。柴は妖術師の冷酷さをのぞかせる形で、また千鉱の後見人という責任から、あきらめて見捨てるべきと主張した。伯理は最悪でも(ワープをとめてこの場を離れれば)自分は死なないのにだれかに命を捨てる分の悪い賭けをしろとは言い出せない、消極的賛成であった。緋雪は「危険な妖刀の確保という大義のためには千鉱を殺すのはやむを得ない」と思っていたこともあり、救出に賛成であるものの躊躇を見せる。千鉱はもともと精神が異常であるため、競売会場と蔵が入り交じるようになった場所から蔵へ飛びこみ、商品の人たちを救出しに向かった。伯理と京羅はともに強靭な精神力により持ちこたえ、奇跡的に千鉱が帰って来るまでの時間が生まれたが、京羅はついに真打に体力を吸いつくされ、膝をついたまま絶命した。

会場が大混乱に陥る中、戦闘と救出を終えた千鉱に極度の疲労が襲ってきた。壇上のその様子を見て少数のヤクザが「六平の息子と妖刀が目の前にあるぞ」と突進してきた。伯理を背負ってワープした柴が千鉱の肩を取り、ついで会場外へワープしようとする。京羅のわきに残された真打を取ろうと千鉱は手を伸ばし、手が真打にふれた瞬間柴はワープした。しかし会場外で柴の横に千鉱はいなかった。ワープを行う一瞬先に多福が結界術で千鉱と真打を隔離したのであった。多福とともに結界に入った緋雪が千鉱を見下ろし、「宣言通り、真打と淵天をもらう」と告げた。千鉱は緋雪に対して「真打の出品と神奈備による入手は毘灼の思わく通りの可能性がある。単に妖刀を神奈毘に渡すだけなのは危険だ。しかし真打を俺が持っているだけなのも危険だということは京羅を見てわかった。それにお前の立場のこともある。そこで、(1) 淵天は俺が使い続けるが、俺が神奈備に加わり、神奈備の戦力としてはたらく (2) 真打は神奈備に渡す。封印などの安全処置は行ってくれてかまわない (3) 毘灼の動きに近づけるような、機微のある立場に俺をつけるよう助力してくれ 淵天は封印で俺は監禁とするよりも、俺が戦力になるほうが神奈備にとってはメリットが大きいし、神奈備の手の外で俺が暴れるよりも配下にあるほうがよいだろう。淵天を確保するという命令を達成できて、さらに味方にできたという体にすれば、お前の功績にもなる。かといって神奈備は100%の信用はできないから、何かあったときには俺が関与して動けるという条件は欲しい」と交渉し、緋雪はそれを呑んだ。三人は崩壊した会場を出て柴のもとにやってくる。柴は緋雪が真打を持っていることを問題にしたが千鉱が交渉したと告げると鉾をおさめた。千鉱と伯理は今後のことを話し、伯理は千鉱に同行してともに戦うことを申し出た。

登場人物

声の項はボイスコミックの担当声優。

六平 千鉱(ろくひら チヒロ)
声 - 石毛翔弥[6]
本作の主人公[5]。18歳。一人称は「俺」。妖術師。刀匠の父国重を尊敬しており、自分も刀匠になろうと考えたが父を殺されて、その際に自分の顔に傷をつけられる。妖刀淵天を保持している。
涅(くろ)
千(ちぎり)
猩(あか)
錦(にしき)
柴 登悟(しば とうご)
声 - 福島潤[6]
妖術師。国重とは古くからの知り合いでチヒロとも交流があり、国重亡き後はチヒロの世話をしている。元々は神奈備に所属していた。
ヒナオ
声 - 唯野あかり
ハルハルで働く少女。妖術師とその依頼人の橋渡し役をしている。チヒロ・柴とは昔からの知り合い。
鏡凪 シャル(きょうなぎ シャル)
声 - 立石みこ
孤児の幼い少女。妖術師によって母親を殺される。妖術師に狙われるもチヒロに助けられる。大食い。
薊(あざみ)
国に雇われている妖術師神奈備で柴とは古くからの知り合い。妖術なしで敵を退けるほどの力を持つ。
六平 国重(ろくひら くにしげ)
声 - 藤巻健太
チヒロの父。優秀な刀匠で特別な技法にて妖刀を生成する技術があったために毘灼の妖術師に狙われて、妖刀を奪われて命を落とす。
双城 厳一(そうじょう げんいち)
日本中を股にかける武器商人で妖刀刳雲を保持している。
鳴(めい)
結(ゆい)
降(こう)
円 法炸(まどか のりさく)
声 - 野澤英義
妖術師。手製のダルマを爆発される技で通称:ダルマと呼ばれている。シャルを狙うがチヒロに敗れる。その後妖術師から足を洗おうとするが、双城によって姉もろとも殺される。

用語解説

妖術師
刀の保持が認められている社会で治安が悪化しているので自衛の手段としている存在。暴力団などに雇われるものと国に雇われている神奈備がいる。
妖刀
国重によって開発された特別な刀。斉延戦争中に6本開発して、戦争を早めに終わらせたと言われている。戦後国重の工房に保管されていたが、毘灼の妖術師によって全て奪われる。その後チヒロが新たな妖刀を生成したので7本ある。
毘灼(ひしゃく)
妖術師組織。暴力団などの後ろ盾となり、妖刀6本を奪う。
ハルハル
東京にある喫茶店。ヒナオが働いており、チヒロ・柴ら妖術師らの交流の場となっている。
玄力(げんりょく)
妖術を構成する生命エネルギーで妖刀を持つことでさらにパワーアップさせることが出来る。全人間に眠っている。
斉廷戦争(せいていせんそう)
18年前、日本に襲来した"敵"との間に起こった戦争。日本中の妖術師の集結を以ってしても劣勢が長く続いたが、国重の生み出した6本の妖刀により日本が勝利した。
淵天(えんてん)
斉廷戦争の後に国重が六妖刀とは別に作った妖刀。確認されている中では七つ目の妖刀であるが不明。国重暗殺の際に何らかの経緯で毘灼には奪取されず、生き残った千鉱は国重暗殺を機に、淵天を用いて戦う妖術師となる。

作風

OKAMOTO'Sのオカモトショウによると、本作は「“刀”がポイントになっていて、妖術的な技を使う」点においては『BLEACH』に近く、ダークヒーロー系の作品である[2]。「コマ割りはわりと大きめで、細かい説明がなくてもしっかりストーリーが動いていく」よう描かれており、絵やデフォルメ表現も上手である[2]。刀を中心として、妖術のほか、「日本古来のファンタジーの要素」を盛りこんだ世界観となっている[2]

東京が描かれている場面では、高層ビルやタワーのデザインがおしゃれに描かれている[2]。オカモトは日常のシーンとバトルシーンの緩急のバランスがよく、それでいて「違和感なくストーリーが進んでいく」点が本作の良さであると語っている[2]

反響

本作は作者の外薗による初の長編での連載作品である[5]。しかし第1話が掲載された時点の2023年9月19日、日本中国韓国を除いて世界中で配信されている集英社のアプリ「Manga Plus」でのランキングで、10位入りを果たす[5]。これは『ブラッククローバー』と『SPY×FAMILY』を抑えてのものであった[5]。24日時点では5位に入り、『僕のヒーローアカデミア』を抑えている[5]

原因のひとつとして、本作は第1話が掲載される42号が発売される19日より前に、14日時点でインターネット上に内容がリークしていたことが挙げられる[5]。その時点でファンアートや既存の漫画と比較する画像などがそれまでの新連載と比較すると多く投稿されていた[5]。さらに、本作はインターネットミームの画像が多く制作された[5]。主人公のチヒロの画像を使用し、「ジャンプ史上最高の漫画」と投稿されたのをはじめとして、『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィなど、ジャンプの人気作品の主人公とチヒロのコラ画像が制作され、「カグラバチ最高!」と投稿された[5]。編集者のアナイスによると、本作は「もともと日本刀を使ったり、妖術が登場したりと昨今のジャンプの人気作品の特性を掴んでいる作品なので海外ファンから注目されるのも自然に感じる」が、ファンがアニメ化を前提としたオフィシャルサウンドトラックを投稿したタイミングで、ミームに拍車がかかっている[5]。これをきっかけとして、自作アニメやチヒロ役の声を自身で吹き替えている動画、PlayStation 4のソフトに本作の写真を入れるものなどが投稿された[5]。これらが現実で起きた既成事実かのように投稿され、それに過剰に反応があったことにより、本作のミームは現象化している[5]。クソコラや事実無根の情報もあったが、本作の「人気を押し上げる形」となった[5]。その後、ミームに嫌気がさした人から、ミームに対して批判的な意見も挙がっている[5]

書誌情報

  • 外薗健『カグラバチ』 集英社〈ジャンプ コミックス〉、既刊3巻(2024年7月4日現在)
    1. 「すべきこと」 2024年2月7日第1刷発行(2024年2月2日発売[7][9])、ISBN 978-4-08-883819-9
    2. 「淵天vs刳雲」 2024年5月7日第1刷発行(2024年5月2日発売[10])、ISBN 978-4-08-883880-9
    3. 「闇の騎士」 2024年7月9日第1刷発行(2024年7月4日発売[11])、ISBN 978-4-08-884116-8

脚注

  1. ^ a b c d e “父のもとで刀匠を目指していたはずが…憎しみに駆られた少年の剣戟バトルアクション”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年9月19日). https://natalie.mu/comic/news/541554 2024年3月3日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f 森朋之 (2023年10月17日). “OKAMOTO’Sオカモトショウ、「ジャンプ」期待の新作『カグラバチ』を語る 「ちゃんと応援しないといけない」”. リアルサウンド. blueprint. 2024年3月3日閲覧。
  3. ^ 外薗健「カグラバチ 第14話」『週刊少年ジャンプ』2024年3号、集英社、2023年12月18日、299頁。 
  4. ^ a b “ジャンプで3号連続新連載がスタート 3作家全員が手塚賞出身者&連載デビュー作”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年9月11日). https://natalie.mu/comic/news/540347 2024年3月3日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o アナイス(ANAIS) (2023年9月27日). “ジャンプ新連載『カグラバチ』ネットミームで異例の国際的ヒット? 欧米圏の読者から大反響”. リアルサウンド. blueprint. 2024年3月3日閲覧。
  6. ^ a b c “週刊少年ジャンプ新連載をボイスコミック化! 『魔々勇々』、『カグラバチ』のボイスコミックを1月31日(水)から順次公開!”. PR TIMES (2024年1月31日). 2024年3月3日閲覧。
  7. ^ a b “堀越耕平も推薦、憎しみに駆られた少年の剣戟バトルアクション「カグラバチ」1巻”. コミックナタリー (ナターシャ). (2024年2月2日). https://natalie.mu/comic/news/559535 2024年3月3日閲覧。 
  8. ^ “カグラバチ:「ジャンプ」話題作 最新3巻で35万部突破 「NARUTO」岸本斉史も推薦 「捲らせ、魅せる、その画に力と想いが宿ってる。」”. まんたんウェブ. MANTAN (2024年7月3日). 2024年7月4日閲覧。
  9. ^ “カグラバチ 1”. 集英社. 2024年3月3日閲覧。
  10. ^ “カグラバチ 2”. 集英社. 2024年5月2日閲覧。
  11. ^ “カグラバチ 3”. 集英社. 2024年7月4日閲覧。

外部リンク

  • 『カグラバチ』 - 集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
  • カグラバチ (@kagurabachi_x) - X(旧Twitter)
週刊少年ジャンプ連載中の漫画作品 (2024年8月19日現在)
通常連載
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