「バック・イン・ザ・U.S.A.」(英語: Back In The U.S.A.)は、チャック・ベリーの楽曲。1959年5月にチェス・レコードよりシングル盤として発売され、Billboard Top 100で最高位37位を獲得した[1]。オリジナル・アルバムには未収録となっており、1962年に発売されたコンピレーション・アルバム『ツイスト(英語版)』でアルバム初収録となった。
作詞作曲はベリー自身が手がけており、オーストラリア旅行を終えてアメリカに帰国した際に書いた[2]。1978年にリンダ・ロンシュタットによってカバーされた。ロックの殿堂のWebサイトに掲載されたベリーの人物紹介には、ベリーは「ドライブインや街角のカフェなどの『ハンバーガーが昼夜を問わずオープングリルで焼けていていたり/イェイ、そしてジュークボックスでレコードがジャンプするアメリカのような場所』に敬意を表していた」と記載されている[3]。
レコーディング
「バック・イン・ザ・U.S.A.」のレコーディングは、1959年2月17日にイリノイ州シカゴで行われた。プロデュースは、レナード・チェス(英語版)とフィル・チェスが手がけた[4]。
カバー・バージョンや文化的影響
リンダ・ロンシュタットによるカバー
ロンシュタットは、ベリーによるオリジナル・バージョンをロサンゼルスの近くで以前彼女のバンドに在籍したイーグルスのグレン・フライが運転する車中で、彼が作ったカセットテープで聴いた。ロンシュタットはフライに「私たちは昔、トルバドゥールのバーのあたりに座って『なんてこと、レコード契約ができない』なんて話していた」ことを思い出させており、「私たちは一文無しで悲惨だったし、自分たちが悲惨だと思っていたし、自分たちがとても貴重だと思っていた。突然彼の顔を見て見て私はこう言った:『坊や、人生は本当に厳しいよ。私たちはポケットに入っているお金を全部持って(アスペンに)スキーに行くんだし、楽しい時間を過ごせるし、テーププレーヤーには素晴らしい音楽が流れているんだ』と。ちょうどその時に「バック・イン・ザ・U.S.A.」が流れてきて、私はさらに『歌うには最高の曲だな。歌ってみようと思う』と言った」回想している[5]。
ロンシュタットによるカバー・バージョンは、キャッシュボックス誌で最高位11位[6]、Billboard Hot 100で最高位16位[7]を獲得した。1987年10月16日、ロンシュタットはセントルイスのフォックス・シアターでチャック・ベリーの60歳の誕生日を祝うコンサートの一環としてベリーとともにステージに立った。製作助手のマーク・スローコムによれば、ロンシュタットとバンドはハ長調でリハーサルしていたのだが、ベリーの「バック・イン・ザ・U.S.A.」のコンサートでのギター演奏はト長調にする必要があった。スロコーム曰く「リンダ・ロンシュタットはプロなので、彼女が緊張していたり、失敗したりするのを聞くことはない。だけど……彼女がステージを降りるときにはとても腹を立てていて、楽屋を通り抜けてステージドアから出て、リムジンに乗り込んで2回目のステージには戻ってこなかった(ベリーの誕生日イベントは同じセットリストと同じゲストで2回のコンサートを予定していた)。」「バック・イン・ザ・U.S.A.」のロンシュタットとベリーの演奏はベリーの60歳誕生日コンサートの映画化作品、1987年公開の『ヘイル・ヘイル・ロックンロール(英語版)』とサウンドトラック・アルバムでもでも取り上げられているが、スローコムによれば「ロンシュタットがとても怒っていたので(演奏を)公開するためにサインしてもらうのにとても苦労した」とのことである[8]。
演奏
その他
- アラン・デイル&カジュアルズ(英語版)は、カバー・バージョンを1959年にシングル盤として発売した。B面にはボ・ディドリーのカバー曲「クラッキン・アップ」を収録[9]。
- ビートルズが1968年に発売したアルバム『ザ・ビートルズ』のオープニング・トラック「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」は、本作のパロディ・ソングである[10]。
- MC5は、1970年に発売した同名のアルバムにカバー・バージョンを収録した。
- バナナ&ザ・バンチは、1972年に発売したアルバム『Mid-Mountain Ranch』にカバー・バージョンを収録した。
- エドガー・ウィンターズ・ホワイト・トラッシュは、1972年に発売したライブ・アルバム『Roadwork』にライブでカバーした際の音源を収録した。
- ジョナサン・リッチマン&ザ・モダン・ラヴァーズ(英語版)は、1976年に発売した同名のアルバムにカバー・バージョンを収録した。
- ジーン・サマーズ(英語版)は、1983年に発売したアルバム『Live' In Scandinavia』にカバー・バージョンを収録し、一部のライブでオープニング・トラックとして演奏した[11]。
- ブラック・クロウズのクリス・ロビンソン(英語版)とリッチ・ロビンソン(英語版)は、2000年にベリーがケネディ・センター名誉賞を受賞した際に本作を演奏した。
- Kidsongsのホームビデオ『Sing Out, America!』には、「Living in the USA」というタイトルで収録された。
- ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドは、1975年2月5日にペンシルバニア州ブリンマーで開催されたコンサートで、エンディング曲として演奏した。
チャート成績
チャック・ベリー版
チャート (1959年) | 最高位 |
週間チャート US Billboard Hot 100[1] | 37 |
US Hot R&B/Hip-Hop Songs (Billboard)[12] | 16 |
リンダ・ロンシュタット版
週間チャート チャート (1978年) | 最高位 |
オーストラリア (Kent Music Report)[13] | 18 |
Canada Top Single (RPM)[14] | 8 |
Canada Country Tracks (RPM)[15] | 43 |
ニュージーランド (Recorded Music NZ)[16] | 24 |
南アフリカ (Springbok Radio SA Top 20)[17] | 11 |
US Billboard Hot 100[7] | 16 |
US Adult Contemporary (Billboard)[18] | 30 |
US Hot Country Songs (Billboard)[19] | 41 |
US Cash Box Top 100[6] | 11 |
年間チャート チャート(1978年) | 順位 |
Canada Top Single (RPM)[20] | 83 |
US (Joel Whitburn's Pop Annual)[21] | 113 |
US Cash Box[22] | 88 |
脚注
[脚注の使い方]
出典
- ^ a b “The Hot 100 Chart”. Billboard (1959年7月13日). 2020年10月24日閲覧。
- ^ Deming, Mark. Back in the U.S.A. - Chuck Berry | Song Info - オールミュージック. 2020年10月21日閲覧。
- ^ “Inductee explorer | Rock & Roll Hall of Fame”. Rockhall.com. 2016年8月29日閲覧。
- ^ Berry, Chuck (2000). Chuck Berry: The Anthology (Media notes). MCA Records/Chess.
- ^ Eliot, Marc (2005). To the Limit: the untold story of the Eagles (1st DaCapo Press ed.). Cambridge MA: DaCapo Press. pp. 177-178. ISBN 0-306-81398-X
- ^ a b “Cash Box Top 100 Singles, October 28, 1978”. 2018年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月24日閲覧。
- ^ a b “The Hot 100 Chart”. Billboard (1978年10月14日). 2020年10月24日閲覧。
- ^ Pegg, Bruce (2002). Brown Eyed Handsome Man:the life and hard times of Chuck Berry. NYC: Routledge. p. 221. ISBN 0-415-93748-5
- ^ “Alan Dale And The Casuals - Back In The U.S.A. (1959, Vinyl)”. Discogs. Zink Media. 2020年10月25日閲覧。
- ^ Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt and Company. p. 422. ISBN 0-8050-5249-6
- ^ Gene Summers "Live" In Scandinavia LP Sunrock Records #SRLP 841, 1983, Sweden. "Back In The USA" concert's opening track.
- ^ “Chuck Berry Chart History (Hot R&B/Hip-Hop Songs)”. Billboard. 2022年4月6日閲覧。
- ^ “Forum - 1970 (ARIA Charts: Special Occasion Charts)”. Australian-charts.com. 2016年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月26日閲覧。
- ^ “Top RPM Singles: Issue 76”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年4月6日閲覧。
- ^ “Top RPM Country Tracks: Issue 107”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年4月6日閲覧。
- ^ “charts.nz - Linda Ronstadt - Back In The USA”. charts.org.nz. 2020年10月24日閲覧。
- ^ “South African Rock Lists Website - SA Charts 1965 - 1989 Songs (A-B)”. www.rock.co.za. 2020年10月21日閲覧。
- ^ “Linda Ronstadt Chart History (Adult Contemporary)”. Billboard. 2022年4月6日閲覧。
- ^ “Linda Ronstadt Chart History (Hot Country Songs)”. Billboard. 2022年4月6日閲覧。
- ^ “Top 200 Singles of '78”. RPM. Library and Archives Canada. 2020年10月24日閲覧。
- ^ Whitburn, Joel (1999). Pop Annual. Menomonee Falls, Wisconsin: Record Research Inc.. ISBN 0-89820-142-X
- ^ “Cash Box Year-End Charts: Top 100 Pop Singles, December 30, 1978”. 2018年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月24日閲覧。
外部リンク
- Back in the U.S.A. - Genius(英語版)の歌詞ページ
|
---|
ストーン・ポニーズのアルバム | - 『リンダ・ロンシュタット・アンド・ストーン・ポニーズ(英語版)』
- 『エヴァ―グリーンVol.2(英語版)』
- 『ストーン・ポニーズ&フレンズVol.3(英語版)』
|
---|
スタジオ・アルバム | - 『ハンド・ソーン…ホーム・グローン(英語版)』
- 『シルク・パース(英語版)』
- 『リンダ・ロンシュタット(英語版)』
- 『ドント・クライ・ナウ』
- 『悪いあなた』
- 『哀しみのプリズナー』
- 『風にさらわれた恋』
- 『夢はひとつだけ』
- 『ミス・アメリカ』
- 『激愛』
- 『ゲット・クローサー』
- 『ホワッツ・ニュー』
- 『ラッシュ・ライフ(英語版)』
- 『フォー・センティメンタル・リーズンズ(英語版)』
- 『ソングス・オブ・マイ・ファーザー (カンシオーネス・デ・ミ・パードレ)(英語版)』
- 『クライ・ライク・ア・レインストーム』
- 『マス・カンシオーネス(英語版)』
- 『情熱(英語版)』
- 『ウィンター・ライト(英語版)』
- 『フィールズ・ライク・ホーム』
- 『愛の贈りもの(英語版)』
- 『夢見る頃を過ぎても』
- 『ア・メリー・リトル・クリスマス(英語版)』
- 『ハミン・トゥ・マイセルフ(英語版)』
|
---|
コラボレーション | - 『トリオ』
- 『サンティアゴ(英語版)』
- 『トリオ2』
- 『ウェスターン・ウォール』
- 『新たなる旅立ち(英語版)』
- 『コンプリート・トリオ・コレクション(英語版)』
|
---|
コンピレーション | - 『ディファレント・ドラム(英語版)』
- 『グレイテスト・ヒッツ(英語版)』}
- 『グレイテスト・ヒッツVol.2(英語版)』
- 『ヴェリー・ベスト・オブ・リンダ・ロンシュタット(英語版)』
- 『Mi Jardin Azul: Las Canciones Favoritas』
- 『デュエッツ(英語版)』
|
---|
ヒット・シングル | |
---|
関連項目 | - Discography
- 「ホーマーの新商売」(『ザ・シンプソンズ』)(英語版)
- 『FM』(映画)(英語版)
- 『ペンザンスの海賊』(映画)(英語版)
|
---|
Book |
典拠管理データベース | - MusicBrainzリリース・グループ
- MusicBrainz作品
|
---|