第二の性

第二の性』(だいにのせい、仏語: Le Deuxième Sexe)は、1949年6月に刊行された、フランスの実存主義者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの著作(ISBN:0-679-72451-6 、OCLC:20905133)。

女性への待遇について歴史を通して考察した作品であり、フェミニズムの代表的作品とされることも多い。

女性ともう一方の性

ボーヴォワールは本著中で、女性とは、歴史的に「もう一方の」、つまり「通常の」男性から逸脱した性として定義されてきたと主張している[1]。 ボーヴォワールは、自身について書いた後に『第二の性』に取り組んだ。彼女が最初に書いたのは、自身が女性であることだったが、女性について定義する必要を感じて本著を執筆した。

ジェンダーとセックス

ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という理論[2]は、「セックス」と「ジェンダー」の相違を示しているとジュディス・バトラーは指摘している。バトラーによれば、「ジェンダー」とは「徐々に獲得していった」アイデンティティの一面だと示唆している。また、本著はジェンダーに対する根本的な理解を潜在的にもたらしたのだという[3]

翻訳の問題

トリル・モイの指摘によれば、現在の『第二の性』の英訳には誤りがあるという[4]哲学概念についての微妙な語彙がしばしば誤訳され、本文も大幅に削られている[5]

英語の出版権を持つのはAlfred A. Knopf, Incである。 モイによれば、出版者は英語の文章に問題があることに気づいていたが、彼らは長く、新しく翻訳する必要はないと主張していたという[4]。 著者ボーヴォワール自身も1985年のインタビューで、新しい翻訳を次のようにはっきりと希望している。「私は『第二の性』の新しい翻訳、つまりもっとずっと正確で、妥協のない正確な翻訳を切望している[6]

出版社はその後、これらの要望を受け入れて新しい翻訳を依頼。2009年にコンスタンス・ボーデとシーラ・マロヴァニー=シュヴァリエ[7]による新英訳がなされる。


訴訟

1950年、訴訟の対象となった。ボーヴォワールは同著中で、ベル・エポック期の代表的な美女で知られ、当時大変に著名なバレエダンサークルチザンヌで数々のゴシップの対象となっていたクレオ・ド・メロードを取り上げた上で「貴族を騙った高級娼婦」と記述した。クレオは貴族の末裔である、と称していたことに異議を唱えた内容である。それに対してクレオは、名誉毀損として裁判を起こした。

裁判はクレオの勝訴という結果に終わり、ボーヴォワールには賠償が命じられた。ただし、この賠償金は「フラン・サンボリック」といって額面のみで実際には支払わなくてもよい性質のものであった。

実際のクレオについて、本当に貴族の出であったのかは謎のままである。

キャラクター

プラトン: 人々がもともと一つの存在であり、その後二つに分かれたとする「プラトン的神話」を批判します。この見解は、性の分裂が避けられないものであるという前提に基づいており、自然界において二つの性別が常に生物学的な現実であるわけではないことを強調します。

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル: 性を生殖と種の発展に関連付けます。彼は女性を自然に受動的な役割を担う存在と見なします。ボーヴォワールは、性行為が人間の本質の一部である必要はないとし、ヘーゲルのこの前提に異議を唱えます。

ジークムント・フロイト: フロイトの理論は、男性が優れており、性はペニスを中心にしていると仮定します。フロイトは女性を男性の不完全なバージョンとして見ており、社会的価値観が性に与える影響を批判します。

フリードリヒ・エンゲルス: 技術と私有財産が男性の仕事を価値あるものにし、女性を抑圧することを主張します。ボーヴォワールは、この理論が女性を経済的な自由から奪う不完全なものであると指摘します。

ピエール=ジョゼフ・プルードン: 女性が家庭に留まることを支持する唯一の改革者と見なされます。プルードンは女性を男性の支援者としてのみ見ており、女性の改革運動での自由を妨げます。

アンリ・ド・モンテルラン: 女性性を否定的な力とみなし、女性を男性に快楽を与えるために有用な存在と見なします。ボーヴォワールは、モンテルランの女性を軽蔑する見解とナチのイデオロギーとの一致を批判します。

D.H. ローレンス: 性別を対立する極として捉え、男性が女性を征服すべきであると主張します。彼は女性が完全に男性に服従することを期待し、この見解が男性の優位性を支持していると指摘します。

ポール・クローデル: 女性を男性の従者と見なすカトリック思想家です。クローデルは、女性が神と直接的なつながりを持っていると考えていますが、そのつながりは男性の視点から理解されると述べています。

アンドレ・ブルトン: 女性を美と神聖な存在として見ますが、彼らを詩のためのフィギュアとして使用し、「他者」として捉えます。

スタンダール: 女性を具体的な存在として見なし、彼女たちの純粋で真の価値を評価します。彼は彼女たちの自由のための闘いを認め、女性を男性の英雄から独立した主体として評価します。

ソフィア・トルストイ: トルストイの妻として不幸な結婚生活を送り、彼女の日記は若くして結婚させられた女性たちの状況を代表しています。彼女は結婚生活に失望し、この状況は多くの女性が直面する困難を反映しています。[8]

邦訳

  • 生島遼一訳『ボーヴォワール著作集:第6巻 第二の性*』、『ボーヴォワール著作集:第7巻 第二の性**』、京都:人文書院、1966年。
  • 『第二の性』を原文で読み直す会訳『第二の性 決定版』全3巻、新潮文庫、2001年
  • 『第二の性』を原文で読み直す会訳『第二の性 決定版』全3巻、河出文庫、2023年(新潮文庫〔2001年〕版の復刊)

脚注

  1. ^ シモーヌ・ド・ボーヴォワール、『 Force of Circumstances 』。リチャード・ハワード英訳。(ペンギン社、1968年)
  2. ^ シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』(Vintage Books, 1973年), 301ページ
  3. ^ ジュディス・バトラー, 『シモーヌ・ド・ボーヴォワールの《第二の性》に見るセックスとジェンダー』、Yale French Studies , No. 72 (1986年), 35 - 49ページ.
  4. ^ a b トリル・モイ, 'While we wait: The English translation of The Second Sex' in Signs: Journal of Women in Culture and Society vol. 27, no 4 (2002年), 1005–1035ページ.
  5. ^ マーガレット・シモンズ, 'The Silencing of Simone de Beauvoir: Guess What's Missing from The Second Sex' in Beauvoir and The Second Sex (1999年), 61-71ページ
  6. ^ マーガレット・シモンズ, 'Beauvoir Interview (1985年)' in Beauvoir and The Second Sex (1999年), 93-94ページ
  7. ^ コンスタンス・ボーデ、シーラ・マロヴァニー=シュヴァリエ訳, 'The Second Sex’, Vintage books, 2009年
  8. ^ “İkinci Cinsiyet Özet ve Karakter Analizi - Arabuloku” (トルコ語) (2024年9月5日). 2024年9月5日閲覧。

参照

外部リンク

  • 'The Second Sex' by Simone de Beauvoir (Free English Translation of a small part of the book のページが Marxists Internet Archive に保存されたもの)
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