2015年レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ ラスベガスでは、通算10回目となるレッドブル・エアレース・ワールドシリーズの内、2015年10月17日・18日にアメリカ合衆国のネバダ州ラスベガスで行われた2015年シーズン最終戦(第8戦)について述べる。会場は、2014年シーズン第7戦の舞台と同じラスベガス・モーター・スピードウェイで、今シーズンでは2番目に標高が高い海抜1998フィートである[1]。
概要
9月30日、カービー・チャンブリス(アメリカ)は、ニコラス・イワノフ(フランス)とマティアス・ドルダラー(ドイツ)と共に、アメリカ西南部のモニュメント・バレー上空をフライトした[2]。10月18日には、誕生日を迎えたアメリカのアルペンスキー選手のリンゼイ・ボンが同じく誕生日のチャンブリスの元を訪れ、祝いの言葉を述べた[3]。
これまでの7戦でポール・ボノム、ハンネス・アルヒ、マット・ホールの3名が優勝し、加えてマルティン・ソンカ、室屋義秀、ピート・マクロード、マティアス・ドルダラー、カービー・チャンブリスら5名が表彰台に上った。ボノムとホールは7戦中で表彰台を逃したのはそれぞれ1度のみと好調をキープした。元レッドブル・エアレーサーで現在はレース・ディレクターを務めるスティーブ・ジョーンズは、「ギャンブラーなら“ミスター堅実”のポール・ボノムが勝つ方に賭けるだろうね。彼はレース単体ではなくチャンピオンシップを見据えている。レースに勝ちたいのはやまやまだろうが、8ポイントリードしているからプッシュし過ぎる必要はないんだ。」「マットはポールに勝てそうで勝てないことが多かったけれど[注 1]、彼も既に“ミスター堅実”を名乗ってもおかしくない。マットのフライトはとても美しいから表彰台に上るチャンスも、もちろん優勝するチャンスもある。でも、仮にマットが優勝してもポールが5位以内ならポールがチャンピオンになるし、順調に行けばポールはファイナル4まで進むだろうね。」と述べ、ボノムとホールのしのぎ合いを予測した。また、残る1つの表彰台について、チャンピオンシップには絡まないが、今シーズンファイナル4に4度進み、その内2度表彰台に乗ったマルティン・ソンカと、新しい機体を導入し今シーズン初めて2度表彰台に乗った室屋義秀に期待を寄せた。スロースタートの後、第3戦・第4戦で2連勝したものの、その後は不調続きのハンネス・アルヒについては優勝する実力があることを認めながらも、「直近3レースの成績を考えると期待はできないが、実力を取り戻せば必ず表彰台に戻ってくるだろう」と率直に述べた。[4]
ラスベガスでカジノ・ホテルを運営するMGMリゾーツは、本レースを対象とした倍率を公表した[5]。
2度のトレーニング・フライトでは、パイロン・ヒットや水平違反などでペナルティを受ける選手が続出する中、ディフェンディング・チャンピオンであるナイジェル・ラムがチャンピオンシップの表彰台を狙うボノム、ホール、アルヒ、ソンカらを抑えてトラック・レコードを更新するタイムを記録した[6]。
予選日は好天に恵まれたが、予選前に行われた3度目のトレーニング・フライトでは前日は西風だった風向きが東風に変わり、ラムが調子を落とし11位、48秒台をたたき出したホールを含め8人が前日のラムの記録を上回るタイムを出した[7]。予選では、日本の室屋義秀がボノムやホールら強敵を抑えて自身初の1位に輝いたが、上位5人が0.681秒差にひしめく状態となった[8]。トレーニング・フライトで好調だったラムはDNSで14位となり[8]、ラウンド・オブ・14で室屋と当たり、1.026秒差で敗れ[9]、室屋は今季3度目のファイナル4進出を果たした[10]。今季からマスタークラスに上がったフアン・ベラルデはわずか0.008秒差で敗者最速の座を逃した[9]ことを悔しがりながらも、自身の成長を実感したとのコメントを残した[11]。チャンピオンシップで表彰台に乗る可能性があったマルティン・ソンカは、ラウンド・オブ・8でパイロン・ヒットなどのミスが響き8位に終わった[10]。ファイナル4ではホールがボノムに0.364秒差で競り勝ったものの[12]、ボノムが史上初3度目のチャンピオンとなった[13]。
これまでの7戦の成績上位6名が出場できるチャレンジャークラスは、それぞれ2度ずつ優勝し28ポイントを獲得した上位3名(ダニエル・リファ、ペトル・コプシュタイン、ミカエル・ブラジョー)の他、1度優勝したクリスチャン・ボルトン、ピーター・ポドランセック、フロリアン・バーガーの出場が決定した[14]。予選前日に行われた2度のトレーニング・フライトではコプシュタインが共に58秒台を記録し1位に入った[15]。フランスのミカエル・ブラジョーが優勝しチャンピオンとなった。
マスタークラス
予選
- ^1 スタートゲート進入速度超過により+1秒のペナルティ[8]
- ^2 ゲート4及びゲート10で水平違反により+2秒×2のペナルティ[8]
- ^3 トレーニング・フライト後の着陸時にプロペラをこすってしまった影響でスタートできず[16]
ラウンド・オブ・14
ヒート | 予選1 | パイロット1 | タイム1 | タイム2 | パイロット2 | 予選2 | 1 | 5 | マティアス・ドルダラー | 48.325 | 49.859 | フアン・ベラルデ | 10 | 2 | 4 | ニコラス・イワノフ | 49.748 | 51.7711 | ピート・マクロード | 11 | 3 | 6 | ハンネル・アルヒ | 49.658 | 49.851 | マイケル・グーリアン | 9 | 4 | 3 | ポール・ボノム | 48.341 | 55.3302 | フランソワ・ルボット | 12 | 5 | 7 | カービー・チャンブリス | 52.8111 | 51.1071 | マルティン・ソンカ | 8 | 6 | 2 | マット・ホール | 52.2843 | 54.0843 | ピーター・ベゼネイ | 13 | 7 | 1 | 室屋義秀 | 49.112 | 50.138 | ナイジェル・ラム | 14 | | 凡例 | ラウンド・オブ・8進出 | ノックアウト(敗退) | 敗者の中で最速(=進出) | |
- ^1 ゲート4通過時に水平違反により+2秒のペナルティ[9]
- ^2 ゲート4でパイロン・ヒットにより+3秒、ゲート5通過時に水平違反により+2秒のペナルティ[9]
- ^3 ゲート5でパイロン・ヒットにより+3秒のペナルティ[9]
ラウンド・オブ・8
ヒート | 予選1 | パイロット1 | タイム1 | タイム2 | パイロット2 | 予選2 | 8 | 4 | ニコラス・イワノフ | 51.0951 | 50.3461 | マティアス・ドルダラー | 5 | 9 | 3 | ポール・ボノム | 49.175 | 49.308 | ハンネス・アルヒ | 6 | 10 | 2 | マット・ホール | 49.955 | 53.1632 | マルティン・ソンカ | 8 | 11 | 1 | 室屋義秀 | 48.817 | 50.211 | マイケル・グーリアン | 9 | | |
- ^1 ゲート10通過時に水平違反により+2秒のペナルティ[10]
- ^2 ゲート5でパイロン・ヒットにより+3秒、ゲート10通過時に水平違反により+2秒のペナルティ[10]
チャレンジャークラス
最終ランキング
- マスタークラス
出典
- 脚注
- ^ マット・ホールがポール・ボノムを上回ったのは第3戦と第6戦のみで、ボノムが優勝した第1戦・第2戦・第5戦・第7戦で、ホールは全て2位だった。
- 出典
- ^ “Final arrival of 2015 - hello again Las Vegas”. Red Bull Air Race (2015年10月15日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Pilots tour Monument Valley on their way to Las Vegas”. Red Bull Air Race (2015年9月30日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Double birthday surprise for Chambliss and Vonn”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Steve Jones' Las Vegas predictions”. Red Bull Air Race (2015年10月6日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Smart money on Bonhomme for the title”. Red Bull Air Race (2015年10月17日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Lamb's Las Vegas winning streak in Training 1 & 2”. Red Bull Air Race (2015年10月17日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “In their sights - final Qualifying of 2015”. Red Bull Air Race (2015年10月17日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ a b c d “Muroya maneouvres for race podium”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ a b c d e “Bonhomme maintains march to World Champion podium”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ a b c d “Third title for record-breaking Bonhomme”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “第8戦ラスベガス:決勝レース後リアクション”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月20日閲覧。
- ^ “Decisive win in Las Vegas for Hall”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ a b “Bonhomme, Hall and Arch make up 2015 WC podium”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2015年10月22日閲覧。
- ^ “The Final Challenge”. Red Bull Air Race (2015年10月15日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “Kopfstein lays down a pair of aces in training”. Red Bull Air Race (2015年10月16日). 2015年10月19日閲覧。
- ^ “第8戦ラスベガス:予選後リアクション”. Red Bull Air Race (2015年10月18日). 2016年10月4日閲覧。
- ^ “Kopfstein retains dominance in Challenger Qualifying”. Red Bull Air Race (2015年10月17日). 2015年10月19日閲覧。
外部リンク
- ラスベガス|Red Bull Air Race - 公式サイト